八木德子 ※ページ内のすべての画像はクリックすると見やすくなります。 八木德子の関連作品 「卆寿なる祖母の言葉の染みて来ぬ 死は恐れぬが別れが淋し」 「独り居の家計簿昨夜は合わざるも 不思議やけさは一度で合ひぬ」 「生と死の講演聞きて帰る道 まれまれにして流星を見る」 「僕なんかもてないからネと父親の 義理チョコを食む小学生が」 「保育園帰りの孫は三日月に 「これからどこへ行くの」と問ふも」 「いとしげにわが手を引きし父偲ぶ 酒のにほひを疎みし遠き日」 「青春を少しく拗ねて来し我か 履歴持たざる事にこだわる」 「火の玉になる機と降下の落下傘 見しは三月遠き夜のこと」 「ひと組が六十余名の小学生 戦時の頃がうかびては消ゆる」 「あの日から五十五年の歳月か 寒の戻りの都の慰霊堂」 「一夜明け何処に向かふか人の波 「三月十日」は目な裏にあり」 「落されし焼夷弾の数三十万 墨田区の夜十三の春」 「奇跡的に焼け残りたるわが家は 父のやからの仮宿なりき」 「飛んで行く火の玉それが敵機ぞと 決めて燥ぎぬ今も解け得ず」 「パラシュートが我が家の上を掠めとび 昨夜の如く思ひ起しぬ」 「落下傘の兵士は白布に覆はれて 腰のロープで連行されぬ」 「友どちの消息求め戦禍の街 歩みし春を未だ夢に見る」 「級友の兄の英霊迎えしは 向島駅いま「駅」も無し」 「トラックの荷台の屍も見し 小女いまも目に在り蝋人形の如」 「若者の特攻像よ「とこしえに」開聞岳の方を見て立つ」 「知覧での「特攻会館」に涙して写真に見入るピアスの男」 「ケイタイに応える声の女在り特攻会館閑けさ破る」 「細長き藁の布団に胸いたむ三角兵舎に最後の寝所」 「「後世を安楽に出来る為ならん」遺せし文字が目に焼きつきぬ」 「殉じたる後はホタルで帰ります語り伝える鳥浜とめさん」 「戦争を誰が美化して語らんか況してや我は戦中の子なり」 「この国の大黒柱何時起つや議員また一人「金」に崩れる」 「殉国の兵に恥ずかし現世は「誠心誠意」置き忘れいて」 「愛国も国旗も国家もわが国は拒否反応の多きが哀し」 「ふた月の兵役終へし兄迎へ縋りつきたる遠き日の顕つ」 「貝拾ふ海のすさびに機影見て逃げを構へし九月も半ば」 「うかららの「別れ別れにさせらる」と噂に泣きし敗戦の後」 「正座して玉音放送聞きをりき父の背見つめし十三の春」 「東京のこの町に死しても残るぞと昔気質の父は言ひしに」 「学校も友も町をも焼き尽くし三歳の弟小さき我が背に」 「この路地に蝙蝠飛びし夕べあり鞠つきもせしふる里向島」 「夢の中は時計が無くて和むとぞ小学生の少女は言ひぬ」 「過労死は人のみでなく蜜蜂が早出し苺の為に死すとは」 「「鐘撞きて心の塵を払われよ」と書かれし楼に朝の鐘撞く」 「朝ごとに頑張らねばと言う夫は言いつつ何を頑張るのかとも」 「敗戦後の町工場の残業はラーメン券の支給もありき」 「店内を駆け抜けて行く少年の真白な帽子が目に残りおり」 「吾嬬町西六丁目の「五十番」王少年を知る一人われ」 「王少年そして私の若き日の「五十番」の店とラーメンの味」 「王監督の胴上げ見つつ目に浮かぶ王少年と「五十番」の店」 「亡き母の健やけき頃の如くにも大根刻むわが手に気づく」 「月面を地球の浮きし映像が目に残りいて望月仰ぐ」 「若者の特攻像よ「とこしえに」開聞岳の方を見て立つ」 「礎となりし御霊に手を合わせ三月十日少し安らぐ」 「スカイツリー写さんとして中空に飛行船見ゆツリー横切る」 「押上は十九の春の想い出駅「スカイツリー」の出来を見に行く」 facebookでシェア Twitterでシェア LINEでシェア