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工藤京子［俳人・歌人］

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八戸の食用菊のあせぬ黄よ　おせちに一品ふる里をもる

工藤京子の関連作品

八戸の食用菊のあせぬ黄よ　おせちに一品ふる里をもる
初雪のまぶしき朝に散歩する　米がパラパラけふも先撒かれをり
離るるまで津波を知らずに育ちたり　三・一一のふる里の海
冬籠り終へて真先に歯科へ行く　亡き母つなぐ永久歯なれば
東京で空襲を受けし父なれど　戦かたらず娘に京の名を
亡き夫のカセットテープが見つかりて　十五年ぶりに愛のメッセージ
新たなる変異ウイルス現はるる　予防と治療は地球丸ごと
シベリヤで抑留されし義父おもふ　ジャガイモの皮をむく時いつも
父の背にポツポツ残る弾のあと　夢に現れる東京大空襲
震災にあひし亀の子生きのびて　九年たてば甲羅十八センチ
息子らの植ゑしトマトにくりカボチャ　収穫の秋ぐんと近づく
雪が降るどの高さから降るのだらう　白銀にそまる木々も大地も
亡き母に吾の似てきた相撲好き　長寿も似たら又これもよし
菜の花の畑なつかし古里や　東の空をしばし眺むる
次々とカボチャの花が咲きつづけ　畝から野へと数多の実がなる
ポーランドの友より届くカレンダー　懐かしきかな月曜日が先に
日の出見に太平洋へと歩きをり　丸みをおびし水平線や
生かされてある命ですありがとう
友からの「それからどう？」があったかい
只の人そう言い切れるまで生きる
空に浮く君が描いた羊雲
看護師もスニーカーで走る秒刻み
久々に外出をした年金日
花火見る平和な国を残したい
本の虫息をしている本が好き
明日の事明日に委ねて一直線
初夢で靴がワルツを踊り出す
立冬や母の宝のカーディガン
今むかし落穂ひろひは子の役目
虫の音やタクト見えねど大合唱
新涼の湖畔にひたと乙女像
ハマナスの花咲く頃やクラス会
絵心を芽生えさせたるてんとむし
散るさまを何にたとえむ八重桜
まんさくや桜さく日を予報せり
雪国に春を告げるや黄水仙
山桜古き社に絵馬ひとつ
渡り来る白鳥の声聴く夜かな
句読点いづこに打たむ秋つばめ
古里の色懐かしき一位の実
七夕や長寿の母に似るやうに
薫風に貨物列車の上りかな
菜の花のあまたの十字野に咲けり
ねぐらへと初虹をとぶ鳥の声
えんぶりや烏帽子に馬の息遣ひ
みそ汁の具に大根葉母の如し
沸々とたぎるお粥や春きたる
紅葉や西に八キロ岩木山
秋深しヘッドライトで仕事かな
コロナ禍に叶わぬ帰省　盆の月
八月や終戦記念日わすれえじ
七夕に召されし母の声聞こゆ
菜園の茄子一本で足る昼餉
前庭のさくらんぼの木に初実かな
雪解けて北の窓から光さす
みちのくに下萌の庭あらわるる
裸木に積もりたる雪Ｖサイン
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