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西垣田鶴子［歌人］

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雲海の下はわが郷生れしより　暮らす峡すじいまだねむりぬ

西垣田鶴子の関連作品

雪の面に裸木の影もつれ合う　ゆらりと雪解たちのぼる昼
『雪送り』の歌集一夜に読みしとの　河野さんの文だいじにしまう
除夜の鐘なるまで土間に豆腐つくる　義母手伝いし新妻の頃
壊される家に棲みいし猫二匹　パワーショベルに合わせ首振る
外灯に鈴ふるような花垂るる　牛馬眠らす馬酔木の小花
満天の星の下なる植田なり　わが足型も星を踏み込む
白妙という名の桜に逢いにゆく　緑化センターの一本桜
おみな児の折りたる鶴と豆雛を　卓に並べてひとりの昼餉
花蔭に満月抱きてしんかんと　枝垂れ桜はそよりともせず
風を描く今日の画題にひたむきな　顔並べいる町の教室
線路沿いの合歓がこんなにあることを　花はんなりと咲くまで知らず
若葉風に空気が美味と繰り返し　胸ふくらます都会子汝は
たんぽぽのそばにランドセル二つ置かれ　土堤の向うに子らの声する
徴兵の猶予取り消しし特攻の　兵たる君の遺影幼き
片道の燃料積みて飛びたちし　若きらも見し知覧の秋色
森の音かそかな芽吹き羽化の気配　風が消しゆくまでを聴きいる
千両のひとみつやめく雪兎　掌に乗せさんぐわつ　わが雪送り
照り翳りおもむき変わる雪国の　森はガラスの粉のごとく光る
等圧線こみ合うあたり山沿いの　わが町この週雪だるま並ぶ
ぽきぽきと鳴る肩宥め朝床に　今日一日の作業メモする
蜜月は別居と吾が推奨し　四年目の春独居の気儘
ひとすじのひかりを曳きてわが掌より　魂ぬくごとくほうたるは翔ぶ
母の忌の約束ごとにしんと咲く　友禅菊の深きむらさき
雪解水ホッホッホッと膨らみて　等間隔にひかりを放つ
芽柳に数えるほどの雪とまる　新しき何かに逢えそうな朝
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