関根ミサ子[歌人] ※ページ内のすべての画像はクリックすると見やすくなります。 関根ミサ子の関連作品 「甥姪が送り呉れたる新米を先づ一番に仏壇に上ぐ」 「病む夫の言葉哀しく想ひ出づ五月雨続く夕べの町に」 「われ一人歩むふる里県道に会ふ人もなく景色も変はる」 「医療器具数多並びぬ資料館ほの暗き中鉄錆臭ふ」 「碑に刻まれ残る二十万人紺碧の空眩しき中に」 「父逝きて久しき今日の命日に秋の日は澄み柿は色づく」 「ひぐらしの鳴く声今も耳に残る八月五日は母の命日」 「いつまでも吾が傍にゐるごとし遺影の母のやさしまなざし」 「遠き日に父の逝きたる日を想ひ一人厨に蜆洗ひぬ」 「開く窓ミシン踏むわれ誘うがに 風はやさしく肩をなでゆく」 「肌を射す冷たき風に庭先の 鉢植一つ場所替をする」 「うす化粧したるごとくに草もみぢ 体操始むる朝の公園」 「花水木咲き盛る道車椅子に 押して歩めり日差しの中に」 「食事すみ素直に夫が語り出す 施設の暮らしをぽつりぽつりと」 「学び舎もとうになかりし校庭に 一人たたずみ銅像仰ぐ」 「屋久杉を透かして届く陽に映ゆる 緑の苔はみずみずしかり」 「在りし日の兄と立ちたるこの場所に 遥かに見ゆる清水の港」 「絹衣なびかすやうな滝の水 切り立つ岩に流れ豊けし」 「ねぎ刻み一人厨に立ちながら 母の逝きたる暑き日思ふ」 「一人寝の幾夜眠れぬ吾なれど 朝の体操休まず出づる」 「夫の居る施設でオカリナ聞かせたる 友は逝きにし若さ残して」 「一人居もいつしか慣れて米二合 しかけて今日の一日終る」 「闘病を続くる夫の好みたる 自家製梅干し手渡す吾は」 「ミシン踏む仕事早々切り上げて 夫待つ施設に足早に行く」 「年貢米積まれしと聞く蔵広く 高山陣屋に時代偲びぬ」 「乗鞍の雪解け水を集め来ぬ 奈川渡ダムは青く深かり」 「降り続く雪白々と風に舞ふ 新幹線の尾燈の赤し」 「結び目の菰の新らしき冬牡丹 去り行く人と佇める人と」 「薪刈りも絶えて久しき故里の 電気炬燵に足を温める」 「この広き海の青さに吸ひ込まれ悩むことなど忘れてゐたし」 「疎開児童がこの湯の宿に寝起きして受けゐし授業も遥かとなりぬ」 「雨の夜を在りし日の母想ひつつめくるアルバム笑顔の温し」 「金木犀はほのかに香り流れ来ぬ逝きて久しき父思ひ出す」 「山茶花の咲きて明るき公園にラジオ体操四十数年」 「朝ドラマ過ぎし吾身と重なりぬ遠くなりたる戦後の暮らし」 「震災の幾夜過ぎしか仰ぐ空御霊と紛ふ星の輝く」 「原発に戸惑ふ甥と見上げたる空は降るごとき満天の星」 「やうやくにわれは来たりぬ能登半島凪ぎたる海に陽は眩しかり」 「朝もやの晴れ渡りゆく前山にみんみん蟬の啼く声高く」 「塀越しに今を盛りにのうぜんかづら兄と二人のふる里の道」 「沖縄の戦火映れり資料館遺品に並び手鏡のあり」 「根雪未だ残る平地をゆつくりと北の狐は森に入りゆく」 「小雨止むオホーツクの海果てしなし残る流氷波にゆれゐる」 「われ書きし平和の文字の灯籠は風に吹かれてゆるゆる流る」 「この仕事仕上げて明日は夫の待つ施設に行かん柿たづさへて」 「砂浜に寄せては返す波の音亡き兄語り姉と並びて」 「ひめゆりの思ひを歌碑に詠まれあり紅色淡き花のかたへに」 「ひめゆりの御霊は眠るこの場所に吾も佇み合掌なせり」 「咲き盛る花水木見上げつつ里は今頃田植えの頃か」 「「老い力」読みて数年過ぎたるに再びめくれば笑みこぼれくる」 「モーターの音気にしつつ夜の更けに納期の迫る水着縫ひ上ぐ」 facebookでシェア Twitterでシェア LINEでシェア